傀儡の恋

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 キラをベッドに押し込んだところでようやくマルキオの元へ足を運ぶ。
「失礼します」
 夜明けが間近いと言うこともあり、声を潜めながら呼びかけた。もし眠っていたときは後にしようと思ったのだ。その分、キラのそばにいられるだろうという気持ちがあったことも否定しない。
「どうぞ」
 だが、彼は起きていたようだ。すぐに声が返された。
「失礼します」
 これは少しでも早く報告を終わらせてキラのところに戻るしかない。そう約束したのだから、と思いながらマルキオの部屋の中へと足を踏み入れる。
「やはりですか?」
 マルキオがストレートに問いかけてきた。
「……少し違いました。孤児院の子供が狙いだったようです」
 どうやらプラントに行った技術者の血縁らしい子供がいたようだ。しかも、その技術者の能力がどうしても必要になったらしい。
 だから、その子供を盾に連れ戻そうとしたのではないか。
 それが犯人から聞き出したことからラウが推測した今回の目的である。
「ただ、ひょっとしたらとは考えていたようですね」
 キラかラクス。
 二人のうちどちらかの居場所をつかむヒントがあればいい。
 そう考えていたようだ。
「もっとも、キラの居場所は補足されていると考えていいでしょう」
 カガリに対する切り札になる以上、とラウはつぶやく。
「問題は、何処まで知られているかでしょうね」
 キラの存在だけなのか。それともラクスのこともなのか。
「……それに関してはバルトフェルド氏に頑張ってもらいましょう」
 マルキオはそう言って微笑む。
「一つ謝罪を」
 報告はここまででいいだろう。ソウ判断をしてラウは口を開く。
「何でしょう?」
「……キラに後始末の光景を見られてしまいました」
 すむません、とラウは告げる。
「そうですか」
 小さなため息と共にマルキオが言葉を口にした。
「戦場の気配を感じ取ってしまったのでしょう」
 どうしても、彼は戦いの気配から逃げられないのか。マルキオは小さな声でそうつぶやく。
「状況を説明してほしいとそう言われました」
 何処まで説明をしていいものか、とラウは問いかける。
「……外界に目を向けるのは良いことなのでしょうが……」
 さて、どうしたものでしょうね。マルキオは自問するかのようにつぶやいた。
「このまま隔離していても、自力で見つけ出すでしょうね、あの子は」
「確かに」
 ラウの言葉をマルキオも否定する気はないらしい。素直に同意の言葉を口にする。
「そうですね。襲撃の事実と目的は話してもかまわないでしょう。ただ……」
「わかっています。私のことはあくまでも内密にしておきます」
 それでも追究されたならば、本人ではなく同一の遺伝子を持った人間だと言い張ればいい。
「……すみません」
「いえ。すべては自分の選択の結果ですから」
 なにがとは言わない。それでも彼にはわかったのだろうか。
「あなたにお任せします」
 すぐにこう言ってくれる。
「それと、もう一つ」
「何でしょうか」
「あなたもご自分の感情を押し殺さなくていいと思いますよ?」
 それは自分の気持ちを知られていると言うことか。
「いつ、この命がなくなるのかわかりませんから」
 それに、と苦笑を浮かべる。
「これは一人だけでどうすることもできないものですから」
 かといって押しつけることもできない。
「一番難しい問題ですね、本当に」
 マルキオもそう告げる。
「それでも努力してみられてもいいと思いますよ」
 その言葉にラウは曖昧な笑みを返すしかできなかった。

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最遊釈厄伝